わたしたちを驚かせたのは、先週、美月はこのお客さんと週に6回同伴した。毎日だ。
そして、佐竹はオープンからラストまでいて、必ずシャンパンを卸した。座っているだけで安くはないお店で、いかにも普通のサラリーマン風の佐竹に何故こんなにお金があるのかが疑問で、彼は本当に忠実な犬のように、どれだけ美月の指名が被っていようと、大人しく美月が帰ってくるのを待っていた。
「佐竹さん、まじ怖い」
美月のヘルプに着いていたお店の女の子が卓から抜けて言った。
「どうしたんですか?」
「いや、いい人なんだけどね…。あの人自体は…。
美月ちゃん指名が入ってて寂しいですねぇとか言ったら、美月ちゃんは自分の彼女だから、今は他のお客さんの席で仕事してるだけだから何も寂しくないよ、とか言うの!まぁハマらせるのがあたしたちの仕事だとは思うけど、美月の事何の疑問も抱かずに彼女だと思ってるのが怖い」
「へぇ……」
勝手に勘違いするお客さんがいる。
そういう接客をゆいが昔していた。
でも、美月とゆいには明らかな違いがある気がしていた。
ゆいは自分のしている事が大事になるなんて考えてはいなかった。けれど、美月は全部わかってやっているようにも見えたんだ。
けれど美月がどんな接客をしようと関係ない。色恋営業にどれだけの限界があるのかはわかっている。
そうやって潰れていく人を見てきた。美月は美月で、わたしはわたし。何も気にする事はない。気にする事はないとわかっていたのに。



