そして、結構な確率で、美月の席に着いたお客さんはそのまま美月の指名客になる。

不幸を売りにするのは別にいい。
美月みたいな女の子はいる。
でもわたしは美月が苦手だったし、少し怖くもあった。

怖いもの知らずの若さだけだろうか。
鋭い瞳の奥に隠された貪欲な心というのだろうか。
すらりとしたスタイルに美しい顔。わたしは彼女に似ている人を知っている。
そして彼女の言っている境遇が真実ならば、それを分かり合える人がいる事も知っている。

「がちな話らしいわよ」

ある日の営業終わり、由真とレイとトリガーに飲みに来て、美月の話を聞いた。

「えぇ、あの話マジなの~?レイ、ぜぁったい嘘だと思った~!
不幸話売りにする奴かと思った~!」

「美月本人の口から聞いたわけじゃないけどね。美月と仲のいい愛とるなから聞いた事あるわ。
お母さんの顔も知らないし、お父さんが自殺したのも本当みたいで、親戚って言っても会った事もないような人たちだから、かなり酷い扱い受けてたみたい。
別に夜の仕事してりゃー複雑な家庭環境なんてのも珍しくないけど」

「うんうん、レイんちも複雑だしなぁ~…」

「これは愛たちから聞いた話じゃないけど、そんな環境だったらしいから中学から悪い仲間とつるんでいたみたい。
で、高校も行かなかったらしいんだけど、あの子どうやら風俗やってたらしいのよ」