菫はわたしたちの横を通り過ぎようとした時、わたしの顔を見もしなかった。

「今の、菫さんじゃん」

「あぁ…そっか…トリガー…涼も知ってるか」

「何でキャバ嬢って皆同じような性格なんだろ。まぁお前たちは結構例外だけどさ。
てかお前と菫さんって友達じゃなかったっけ?」

「…友達なんかじゃないよ。きっとあたしみたいな女、菫さんは嫌いだろうし…。菫さんは物事をはっきりしてるタイプだから、わたしみたいにふらふらしてる子なんか嫌いだと思うし…」

涼はそれ以上何も言わなかったけど
場の空気を呼んだように美優のヘルプで着いてくれたTHREEの女の子と楽しそうに喋っていた。
美優はわたしたちの席には中々着けなかったけど、美優の為にシャンパンを卸した。
そうこうしているうちに、小林がやってきて、これまた嬉しそうに声を上げた。

「さくらちゃーーーん!!!本当に久しぶりっ!!」

わたしがTHREEに出勤しなくなって、1番頭を抱えたのはこの人だと思う。

「小林店長お久しぶりです…。本当に突然お店に来なくなって申し訳ありません…」

「いいよぉいいよぉ!!それより体は平気なの?
体調不良で入院してたって聞いて…僕働かせすぎちゃったかなって心配してたんだよぉー!!」

入院していた。そういう話になっているわけか。
それでも人の良い小林は心配そうにわたしの顔を見つめていた。