「しかし涼と綾乃ちゃんが付き合うなんてね…」

「ね~!あたしも聞いた時びっくりしちゃったも~ん!」

少し先を歩く涼は、美優に無理やり飲まされても平然とした顔をしていた。酔っぱらってもあんまり変わりのない涼。でもさっき綾乃に見送られるとき、「あんまり飲みすぎるなよ」と言っていたのを聞いて、改めてこのふたりが付き合ってると実感した。

「それに涼キャバ嬢は嫌いって言ってたのにねー!」

ふざけて涼の前を先回りして言うと、涼のデコピンがおでこに飛んできた。

「痛っ!」

「別にキャバ嬢だから綾乃を好きになったんじゃなくて、綾乃自身を好きになったんだよ。
好きになっちまえば職業なんて関係ねぇ」

きっぱりと言い切る涼。こんな風に大切に想われてるなんて綾乃が羨ましいし、微笑ましい。

「涼って普段はどうしようもないのに、いざという時ちゃんとしてて、大事な事ちゃんと知ってる人だよね」

「お前と俺じゃ違うのさ」

そんな話をしているうちに、THREEの入ってるビルの前までやってきた。
少し前の出来事なのに、こんなに懐かしい気持ちになる。
不本意だったTHREEへの移籍だったけど、このお店でも色々な事があったのだ。凛とゆいは元気でるだろうか。きっとふたりとも違う場所で何かを頑張っているのだろう。

お店の前で少し立ち止まる。
鼓動が少し速くなるのを感じていた。
あの頃は毎日のように通っていたお店なのに、お店の前に来るとより一層懐かしさがこみあげてくる。