「痛っ!何すんだ!」

「あたしよりずっとガキのくせに生意気なのよ!あんた!
その余計な事しか喋らない口を針と糸で縫ったろか?!
綾乃さんもこんな男のどこがいいのかマジで謎だわ!」

ギャーギャー言い合いをする涼とはるなを尻目に、わたしが視線を綾乃へと移す。
眉毛を下げて、うっすらと照れくさそうに笑う。いつもは大人っぽく見えていた赤いリップさえ、顔をくしゃくしゃにして笑うと可愛らしく見えてしまう。

「何かごめん…。さくらが大変な時にこんな事になっちゃって…。
この間バースデーの時に言わなくちゃって思ってたんだけど、さくらのお祝いの席だったし…なんか違うかなって…」

「いやいやごめんはないよ!嬉しい事じゃん!
綾乃ちゃん話あるって言ってたの、涼の事だったんだね?!」

再び目を細めて、少し伏せながら、はにかんで笑った。
わたしはもうすぐ綾乃と2年近い付き合いになる。綾乃とも思い返せば色々な出来事があって、仲が悪くなった日もあった。けれど綾乃はいつだってわたしを大切に思ってくれていた。
ちょっとクールで近寄りがたくみえがちだけど、本当は面倒見が良くて優しい。いつだってき然とした態度を取っていて、強く人を見つめる眼差しが兄弟の朝日と光によく似ている女の子。
でもこんな可愛らしく微笑む綾乃は、初めて見たんだ。