大嫌いなクール王子になぜか溺愛されてます。



「栂野直生(とがのなお)です。よろしくお願いします」


一歩教室へとその足を踏み入れたその瞬間、わたしの胸がドクンと叩きつけられた。

まだちゃんとは顔を見ていない。それなのに、だ。


その音はだんだんと大きくなっていって、呼吸を支配してくる。


うそ、でしょ……。


冷や汗が止まらない。

同姓同名だと信じたいところだけど、そういうわけにもいかない。


たった今教壇の前に立つ、クラスの女子の瞳をハートにさせている魅力的なオーラを放つ長身の人物は、わたしの人生を狂わせるきっかけとなった大嫌いな男だったから──。


「栂野くんの席は、そこの空いてる席な」


「はい」


先生が指差している“そこの空いてる席”とは、あきらかにわたしの左隣で……。


こんなことって……ある?


“あのとき”、身勝手なことを言ったのを最後に姿を消したことは許せなかったけど、今無事に平穏に高校生活を送っているわたしはもう中学時代を思い出してしまう人物には二度と会いたくなかった。

それなのに、こんな逃れられない環境で再開してしまうなんて。


スカートをぎゅっと握りしめうつむいた。


わたしをいじめていたのはこの人物ではない。


だけどこの人さえいなかったら、この人が身勝手なことを言わなかったら、わたしはあんな目に遭わなかった──!


「──残ってるのは男子図書委員と、女子執行委員だなー。じゃんけんで決めるか」