そこまで考えが至らなかった。
ダメだなあ、私。それに比べて一ノ瀬くんは冷静ですごい。
「お前、そんなことで大丈夫か? 男が嫌いって言っときながら、なんで春陽にはそんなにガードがゆるゆるなんだよ」
「だ、だって……春陽くんだよ? 男っていうか、性別は天使って感じだし。全然嫌じゃないよ」
「天使なんて性別あるわけねーだろ。つーかこいつ、見た目はともかく本性は全然天使なんかじゃねーし」
思い切り顔をしかめて言った一ノ瀬くんに、春陽くんはべえっと舌を出す。
はい天使。
その天使のほっぺを、一ノ瀬くんは片手でムギュッと挟んでつぶした。
「とにかく、一緒に風呂入んのは禁止。わかったな?」
「はい……わかりました」
「んむー!」
春陽くんはジタバタ暴れながら抗議をしているようだけれど、頬を挟まれているので言葉になっていない。
やがて兄の手から逃げだし「兄ちゃんのむっつりスケベ!」と可愛らしい暴言を吐いて
2階へ駆け上がっていってしまった。


