そう答えた瞬間、目の前の脱衣所の扉が勢いよく開かれた。
と思ったら、伸びてきた腕が春陽くんの襟首をむんずとつかんで持ち上げる。
「い、一ノ瀬くん……?」
「なにすんだー! 離せよ、兄ちゃん!」
服を着た一ノ瀬くんは、濡れた前髪の間から私と春陽くんをじろりと睨んだ。
「お前たちはそろいもそろって、俺の言ったことを聞いてなかったのか?」
「はあ? なんのことか、僕わかんな~い」
「猫かぶんのやめろ! いつもはもっとワガママでやりたい放題のくせに」
「ひどい! そんなの嘘だもん! 梓おねえちゃんの前で変なこと言わないで!」
「どうせすぐ化けの皮が剥がれるんだ! 可愛い子ぶんな!」
「ぶってないもん! 元々だもん!」
突如始まった兄弟げんかの勢いに圧倒されて、口をはさむことができない。
ワガママでやりたい放題? 春陽くんが?
ちょっと想像がつかないけど、そんな春陽くんもきっと天使のように可愛いんだろうなあ。


