「兄ちゃん! 梓ねえちゃんに変なこと吹きこむなよ!」
兄の手を振り払い、自由になった春陽くんがぷんぷん怒って抗議する。
ほっぺの膨らんだ春陽くんもまた可愛い。
「うるせぇマセガキ。人様んちの娘に手ぇ出すなよ。めんどくせぇ」
「兄ちゃんこそ!」
「お前と一緒にすんな」
「ちょっと。なによ、騒がしい」
兄弟げんかが始まりかけた時、京子さんがリビングから出てきて息子たちをひと睨みで黙らせた。
さすが、母は強し。
玄関に一ノ瀬家全員がそろった。
なんだかここに自分が立っているのが、変な感じ。
「梓ちゃん。おかえりなさい」
「京子さん。おじゃまします……じゃなくて、ただいま帰りました」
「ふふ。そうかしこまらないで。第二の我が家と思ってくつろいでくれたら嬉しいわ」
「はい! 今日からよろしくお願いします!」


