お母さんも「あらまあ」と驚いたように手で口元を隠した。


息子って……春陽くんだけじゃなかったの?

長男て……高校生って……もうしっかり“男の人”ってことだよね?


ザッと体中の血が下に降りていく音がした。


「梓ちゃん……?」


天使な春陽くんにそっと手を引かれても、反応できずにいた時、

背後から「わん!」と犬の鳴き声が響き、ハッと金縛りがとけたように振り返った。


ちょうど真っ白な小型犬が、元気よくこちらに駆けてくるところだった。

その赤いリードの先には、長身の男の人が。


「え……」


男の人と目が合う。

切れ長の瞳が私を映し、大きく見開かれた。


「佐倉……?」



「い、一ノ瀬くんっ!?」