「1ヶ月、お世話になりました!」


日曜の午後。

帰国して迎えに来てくれたお母さんと、一ノ瀬家の玄関で頭を下げた。


「本当に、たくさんご迷惑かけちゃったわ。窓やなんかの修繕費、家で出させてね」

「何言ってるの! こちらこそ、大事な娘さんを危ない目に遭わせちゃったんだもの。窓くらい全然よ。気にしないで」


京子さんが言うと、少し後ろに立っていた一ノ瀬くんが一歩前に出て、私たちに向かって深く頭を下げた。


「梓さんを危険に晒してしまい、申し訳ありませんでした」

「い、一ノ瀬くん!?」


慌てて一ノ瀬くんの肩をつかみ、顔を上げさせた。

一ノ瀬くんが謝る必要なんてこれっぽっちもない。


「やめて! 一ノ瀬くんが私を守ってくれたんじゃん!」

「そうよぉ。うちの梓を守ってくれて、本当にありがとう。千秋くん」


私たち親子の言葉に、一ノ瀬くんは固い顔で頭を振るだけだった。