侵入してきた男は、私が狙いだったのかな。
だとしたら、もう痴漢に遭ったり、追いかけられたりしなくて済むのかな。
安全なのかな。
でも春陽くんのベッドをかりて横になると、だんだん体が震え始めた。
もう大丈夫なはずなのに。
男は捕まって警察に連行されたんだから、またここに現れることはないと、頭ではわかっているのに。
雷の光に浮かび上がる、黒いシルエットが頭に焼き付いて消えない。
顔もよく見えなかったから、あの黒いシルエットだけが男の印象として残っていた。
また窓を割って現れるんじゃないか。
そんな想像ばかりしてしまい、疲れているはずなのに、一向に眠気は訪れそうになかった。
「ムリ……っ」
耐えきれなくて、枕を抱えて部屋を出た。
まだ手が小刻みに震えている。
とにかくひとりでいたくなくて、一ノ瀬くんの部屋の前に立っていた。


