自分の変化に気づきはしたものの、心が追いつかない。
これは初恋だ。
はじめて男の人を好きになった。
それなのに――。
「なんでよりにもよって、彼女がいる人を……」
好きになっちゃうかなあ。
恋に気づく前から失恋しちゃってるじゃん。
しかも彼女と学校でキスしちゃうような人を好きになるなんて、本当に自分が信じられない。
でも……一ノ瀬くんだから。
恋をしてしまったのも、仕方ないのかもなあ。
だって、感じは悪いし口も悪いけど、優しい人だともう知っているから。
仲の良くない私と同居することを認めてくれて、危ないめに遭わないよう送り迎えまでしてくれるような人だから。
私が態度を悪くしても、電車では痴漢から守るよう立ってくれる人だから。
そういう一ノ瀬くんだから、好きになった。
いつの間にか、心も身体も、一ノ瀬くんの方を向いてしまっていた。


