「一ノ瀬くんが、学校で女の子とキスしてるのを見ちゃったの」
「えっ!? 兄ちゃんがキス!?」
「わっ! は、春陽くん! 声が大きい!」
慌てて春陽くんの口をふさぐ。
アイスでちょっとべとついていたけど、あとで洗えばいい。
それより、いまの一ノ瀬くんに聞かれてないよね?
そっちの方が気になってソワソワしてしまう。
「だって。あの兄ちゃんがキスするなんて信じられなくて。しかも学校でなんてさあ」
「信じられないって、一ノ瀬くん、学校ですごくモテるんだよ?」
「でも兄ちゃん、愛想ないし。彼女なんてできるわけないって正直思ってたくらい。女の人を家に連れてきたこともないもん」
「……彼女、いたことないのかな?」
「そういうの隠しそうだし、わかんないけど。でもキスしてたってことは、それが彼女なんじゃないの? 相手はどんな人?」


