「どうせ一ノ瀬くんは告白され慣れてて、いちいち真剣に考えることなんてないんでしょ!」
「おい。誰もそんなこと言ってねぇだろ」
「そういうことじゃん! もう放っといて! 私が誰に告白されて付き合おうと、一ノ瀬くんには関係ないでしょ!」
「この……! ああ、そうかよ! 確かに俺とお前はただの同居人だもんな! それもたった一ヶ月の!」
鼻と鼻がくっつきそうな距離ですごまれ、息を飲む。
一ノ瀬くんが本気で怒ったのを肌で感じた。
「テキトーな奴と付き合って泣かされたって、知らねぇからな!」
なに、それ。
まるで私のことを心配していたみたいな言い方。
なんなの、本当に。
一ノ瀬くんがわからない。
私みたいな期間限定の同居人のことなんて、気にかけなければいいのに。
森さんと付き合っているのに、ムダに優しくしないでよ。
胸が痛くて苦しくて、涙が出そうだった。
鼻の奥がツンとしたけど、我慢してうつむく。
一ノ瀬くんも私も、それからはずっと無言のまま、電車に揺られていた。


