「……そういう意味じゃねぇよ。でも、そうか。ないのか」
なぜか自分の口元を手で覆いながら、一ノ瀬くんが何かぶつぶつと呟いている。
そんなに告白されたことがないって信じられないことなのかな。
それも仕方ないか。
一ノ瀬くんならきっと、小さい頃からモテてモテて大変だったんだろうから。
「けど……ちゃんと考えなくちゃダメだよね。山田、改めてするって言ってたし。その時まで何も考えないわけにはいかないもんね」
内心ため息をつく。
どうして山田も、私なんて気になるようになっちゃったかな。
小鳥のことが気になっていたはずだろうに、そこから私に方向転換って、無理があると思うんだけど。
目をつむり、腕組みをして考えていると、影がさした気がして顔を上げる。
直後息を飲んだ。
まるで覆いかぶさるようにして身を屈めた一ノ瀬くんの、整った顔がすぐ傍にあったから。
「考えんな」
「……え?」


