「起きてたのか」


ほっとしたように笑って入ってくる一ノ瀬くん。

まだ制服を着ているので、ますます驚いた。


「熱はどう? 計ったか?」

「ま、まだだけど。あの、どうして一ノ瀬くんがいるの……?」

「適当に理由つけて早退してきた」

「どうして」

「……母さん出かけてお前が家にひとりって考えたら、落ち着かなくて」


ちょっと早口でそう言うと、一ノ瀬くんは私のおでこにそっと触れてきた。

大きな手はいつもよりひんやりしている。


「まだ熱はあるな。薬は? 昼飯食ってない?」

「うん。まだ。いまおかゆ温めに行こうかなと思ってたとこ」

「俺が温めてくるから、お前は寝てろ。他になんか食いたいもんとかある?」

「ううん。あんまり食欲なくて……」


正直おかゆもあまり食べられないと思う。

一ノ瀬くんは「わかった」と言うと、私の熱をおびた頬を撫で、ほほ笑んだ。