「うん。聞いた。子どもじゃないし、ひとりでも平気だよ」
ガタガタ震えながら笑って見せれば、困ったような顔をされる。
「……なるべく早く帰ってくるから」
そう言うと、一ノ瀬くんは私の前髪をすいて、部屋を出ていく。
その背中を見送りながら、ちょっとだけ、寂しいと思ってしまった。
「兄ちゃん。梓おねえちゃん大丈夫?」
「薬は飲んだからあとは寝てれば治るって。静かにしてやろう」
「うん……」
廊下から春陽くんの元気のない声が聞こえてきて、頬がゆるむ。
心配してくれてる。
兄弟そろって優しいな。
早く治さなくちゃ。
布団をしっかりかぶり、目を閉じる。
吐いた息はいつもよりずっと熱く、湿っぽかった。


