昨日高橋くんに傘を貸したあと、駅まで全速力で走ったのだけれど、やっぱり全身びしょ濡れになってしまった。

駅で待っていた一ノ瀬くんにはすごく怒られたけど、上着を貸してくれた彼は本当に優しい。

電車内のクーラーで濡れた体が冷えてしまい、どんどん寒くなっていったから、まずいなあと自分でも思ってはいたんだけど……。


「風邪なんて滅多にひかないのに、京子さんにも迷惑かけちゃった」

「そこは気にすんな。俺らも風邪なんかひかないから、母さんは久しぶりに看病できるってはりきってたぞ。病院は行かないのか?」

「薬のんだし、そこまでの熱じゃないよ。すぐ治ると思うから、おとなしく寝てる」


あったかくしていれば、きっと大丈夫だ。

病院まで付き添ってもらうなんて申し訳ないし、これ以上迷惑はかけたくなかった。


「そうか。母さん、午後から用事があって出かけるらしいけど」