間に合うかな、と先輩が腕時計を見た瞬間、私は無意識に持っていた傘を差しだしていた。


「あ、あの。よかったら使ってください」


突然の私の申し出に、サッカー部のふたりは目を丸くする。


「え……でも、あなたが濡れちゃうんじゃ」

「大丈夫です! 私、折り畳み傘も持ってきてるんで」

「でも……」

「ほんとにいいの? 佐倉さん」


高橋くんに心配そうな顔を向けられ、大げさなくらい笑って見せた。


「もちろん! 時間ないんだよね? 遠慮なく使って!」


強引に傘を押し付ける私に、高橋くんは困ったように笑ってうなずいてくれた。


「ありがとう、佐倉さん。すごく助かる。明日絶対返すから」

「うん。気を付けてね。部活がんばって!」

「ほんとありがとう! 由奈先輩、行きましょう」

「うん……」