私の手をつかんだまま、腕をぴたりとくっつけてくる一ノ瀬くん。

その体温と、私の腕と全然ちがう、しっかりと筋肉のついた男の人の腕に心臓が跳ねた。


ほらな、と言われ、反論できなかった。

細身に見えている一ノ瀬くんでも、こんなに腕の太さがちがうなんて。


「佐倉はすぐそうやって、自分は女子らしくないって感じで振る舞うけどさ。どう見ても女だよ、お前は」
「そんな風に言われたこと、一度もないよ……」

「じゃあ俺が何度でも言ってやる。お前は女だ。なのに強いふりするから、危なっかしくて目が離せない」


そう言うと、一ノ瀬くんは私の手ごとリードをつかんだまま歩き出す。

緩められないその手の温かさにどぎまぎしながら、私も黙って彼の隣を歩いた。


まるで自分が、守られるべきか弱い女の子みたいになったような錯覚に陥って、一ノ瀬くんが守ってくれるナイトみたいに見えてきて、どうしたらいいのかわからない。

ナイトは、小鳥を守る私の方だったのに……。


けれど一ノ瀬くんの隣りは、なんだか泣きたくなってくるほど、居心地がよかった。