そう思って一ノ瀬くんからリードを受け取った瞬間、ぐんとマロが突然走りだし、その勢いで前につんのめった。


「わっ」

「マロ、ステイ!」


慌てて一ノ瀬くんが、私の手ごとリードを引っ張る。

マロは一ノ瀬くんのかけ声にピシッと反応し、その場に行儀よくお座りした。


さすが、マロがいちばん懐いてる飼い主さまのひと声だ。

ああ、びっくりした……。


「大丈夫か佐倉」

「う、うん。マロ、小さいのにすごいパワーだね? こんなに力があるなんて思わなかった」

「意外とな。つーかお前が非力すぎんじゃね?」

「ええ? そんなことないよ。女子の中ではかなり力ある方だもん」


唇を尖らせた私を、一ノ瀬くんは鼻で笑う。


「こんなに腕ほっせーのに?」