そうか、心配してくれるんだ。

それはそうだよね。

他所の家の娘を預かってるのに、勝手に夜出歩かれて何かあったらまずいもん。


なんて理由をつけてはみるものの、それだけじゃないことはもう私にもわかっていた。


一ノ瀬くんは、口は悪いし憎たらしいところはあるけど、根っこはとても面倒見の良い優しい人なんだ。

2週間も一緒に生活していれば、気づかないわけがない。


私にとって一ノ瀬くんは、高橋くんに続いて、信頼できる男の人になっていた。


いつもと違う時間帯の散歩が嬉しいのか、リードの先のマロがキャンとまた鳴く。


「ねぇ、一ノ瀬くん。私がマロのリード持ってもいい?」

「別にいいけど」

「やった! ワンちゃんの散歩するの、実は憧れだったんだ」


大型犬には力で負けて振り回されそうだけど、小さなマロなら大丈夫。

優雅にお散歩できるはず。