「だからお前はタラシだのチャラ王子だの言われるんだ」
「否定はしない」
「そこは否定しろ、バカ」
目の前でそんなかけ合いをするふたりを、黙って交互に見つめる。
相変わらず仲良しだなあ。
一ノ瀬くんはあまり表情が変わらないクールな人だけど、高橋くんといるときはいつもちょっとだけ楽しそうに見える。
ふたりは中学が一緒だったらしく、通学電車も同じだ。
私が痴漢に遭った時、一ノ瀬くんもその場にいたらしいけれど、よく覚えていない。
助けてくれたのが高橋くんだったことも、あとからきちんと把握したくらい、あの時私はパニックになっていたから。
それがきっかけで高橋くんと挨拶を交わすようになり、よく一緒にいる一ノ瀬くんとも自然と顔見知りになった。


