まるで、いつも私が小鳥にしていたみたいに、周りから私を守るようにして立っている。

お姫様を守るナイトのごとく、厳しい顔で周りを警戒しながら。

あえて車両の端っこに追いやられるようにして、彼は壁になってくれていた。


「一ノ瀬くん……」


いつもみたいに息苦しくない。

一ノ瀬くんが作ってくれた小さな空間に、私は痴漢からも他の乗客からも守られている。


前は小鳥を守るために、毎朝ピリピリと神経をとがらせていた。

とにかく小鳥を守らなきゃって必死だったから。


満員電車にこんなに安心して乗るのははじめてだ。



「一ノ瀬くん。ありがとう」


絶対に聞こえているはずなのに、一ノ瀬くんは返事をしなかった。

でも見上げた顔がほんのりと赤く染まっていたから、たぶん照れてるんだと思う。