「そんなこと言われたって……」

「わかったな?」

「うー……。わ、わかりました」


納得いかないけど、いまはうなずくしかない。

そんな私の考えを読んだように、一ノ瀬くんは深くため息をつき立ち上がる。

私も立とうとしたけど、腰が抜けたのか上手く足に力が入らない。


「どうした?」

「あはは……た、立てない。腰抜けちゃったみたい」

「はあ? しょうがねぇな」


ほら、と差し出された大きな手。

男の人にしては白くてきれいだけど、しっかりと骨ばった手。


そっとその手に自分の手を重ねると、力強く握られる。

想像よりずっと、一ノ瀬くんの手は温かかった。