「な、何か固いのお尻に押し付けられて。でもすぐに駅に着いたから、電車降りて逃げたんだけど」
「……まさか」
目を見開いた一ノ瀬くんに、慌てて首を振る。
「あ、でも! 気のせいかもしれない! 痴漢もだし、そのあと追いかけられた気がしたのも、私の気のせいかも!」
「なんで。でも実際痴漢されて、追いかけられたんだろ」
「だって、なんか自意識過剰かなって。私みたいなの狙う痴漢がそうそういるわけ――」
「こ……の、バカ!」
「ひえっ」
笑って冗談にしようとしたのに、いきなり大きな手で頬を挟まれ、上を向かされた。
真剣な顔をした一ノ瀬くんが、私を真っすぐに見つめている。
「い、一ノ瀬くん……怒ってる?」
「当たり前だろ! 何でお前はそうなんだ! 前にも痴漢されただろ! お前を狙う奴はいるんだよ!」
「でもあれは小鳥を狙って……」
「ちがう! あれは最初からお前を狙ってたんだ!」


