ぶっきらぼうだけど心配してくれている声は、間違いなく一ノ瀬くんのもので、目の前の彼も本物で。
それがわかって私はへなへなとその場に座りこんだ。
「お、おい? 大丈夫か?」
「……一ノ瀬くん、どうしてここに?」
まだ彼は制服姿だった。
私が寄り道している間に、とっくに家に帰ったと思っていたのに。
「春陽に頼まれてた映画のDVDレンタルしたあとそこの本屋寄ってて、いま出てきたとこ。そしたらお前が赤信号なのにすげー顔して走ってたから」
「ギリギリ青信号だったよ」
「いや。あれは赤だったね。……で? お前は?」
一ノ瀬くんは、私と目線を合わせるようにしてしゃがみこむ。
その近さにびくりと震えてしまい、それを見た一ノ瀬くんは顔を険しくした。
「どうした」
「さっき、電車で……たぶん、痴漢みたいなのに遭って」
「何かされたのか!?」


