「邪魔しないでよ。今、雛子ちゃんに連絡先聞こうと思ってたんだから」と、日比谷さんが大きなため息をつく。


……え、そう、だったの?


「連絡先なんて聞いてどうすんだよ」

「別に俺が個人的に聞きたいだけ。わざわざ朔也に許可取る必要はないと思うよ」

「は?」


ふたりの間に挟まれてあたふたしていると、他の友達たちが異変に気づいて駆け寄ってきてくれた。



「みんな!朔也と日比谷が雛子ちゃん取り合ってるぞ!」

「まじで?やれやれ!」


ガヤガヤと一気にうるさくなる空間。私の心配をよそにみんなは面白がっていて、お兄ちゃんが「うるせー!」と一喝する。

それでも険悪な雰囲気というわけではなく日比谷さんも笑っていたから、どうやらじゃれていただけのようだ。


お兄ちゃんも日比谷さんも他の人たちも本当に楽しそうで。心を許し合える関係なんだって、笑顔を見れば分かる。



私はきっと、間違っていた。


不良は怖いものだとひとつのカテゴリーに入れていたけど、お兄ちゃんも日比谷さんも友達も優しい。


だから、怖くない。

不良になったからって、お兄ちゃんが変わってしまったわけじゃなかった。