「もしかして怯えちゃってる?」

「俺ら怖くないよ?優しい庶民だよ」
 

じゃあ、その金属バットはなんですか。

なんで不良って、物騒なものを持ちたがるんだろ。


でも、心の中でいくら反論したって不良たちには伝わらない。もちろん怖いから口には出せない。


内気でひ弱で、おまけにチビ。

中学2年生になっても身長は150センチあるかないかぐらいだし、不良たちからすれば私なんて、自分たちの強さを見せつけやすい最適な獲物なんだと思う。



「……ん?ってか、キミってもしかして……」


なにかに気づいたように不良たちが私の顔を覗き込む。そして、その顔色はみるみる内に青くなっていった。




「え、まさか鬼頭先輩の妹!?」



鬼の頭を書いて〝きとう〟と読む。


これはあだ名でも通り名でもなく、正真正銘の私の名字。


私は名前が雛子(ひなこ)なので本当に名字とのアンバランスさが際立つけど、鬼頭という名字がぴったりな身内がいる。



それは、鬼頭朔也(さくや)という、ふたつ上のお兄ちゃんだ。