「朔也ね、雛子ちゃんの話よくするよ」

「……え?」

「仲間内では相当なシスコンって思われてる」


そう言いながら日比谷さんがクスリとした。



……お兄ちゃんが私のことを?

一体なんの話だろう。メールしても電話しても家で顔を合わせても、前みたいに長く会話をすることなんてないのに。



「朔也の妹だと色々と大変でしょ?」

「……大変なんてレベルじゃないです」


お兄ちゃんが不良になったことで、私の環境はガラリと変わった。

みんな私のことを鬼頭朔也の妹としか見てくれないし、近寄ってくる人たちはお兄ちゃんにしか興味がない。


……私のことなんて、誰も見てくれない。



「……不良のお兄ちゃんなんて、私のお兄ちゃんじゃない」


これは日比谷さんにというよりは、独り言のつもりで呟いた。すると、私の心中を察したように日比谷さんは歩く足を止めた。