すぅっ、と風が通り抜け、パーカーが翻り、髪が踊る。
 私が一歩を踏み出す度に、ポニーテールの髪はピョコピョコ跳ねる。
 イヤホンをつけて、ラジオを聴いていると、ちょうど歌える曲が流れる。
「あ、『夏色の恋』だ…」
「僕らの曲が、どしたの?」
 私は立ち止まって振り返る。
「あっ、涼さん……」
「なんだ、ことねか」
「え何ですか、そのガッカリした、みたいな言い回し」