「比奈子《ひなこ》、お疲れさま~」


バイトを終えて店から出た私を、やっぱり彼はいつも通り待ち伏せていた。


その綺麗な瞳を細め、屈託のない笑みを浮かべて、私にいちごオレのパックを差し出す。


「え、なにこれ?今さっきうちの店で買ったやつ。私に?」


「うん。疲れたでしょ?疲れた時は甘いものがいいんだよ。ハイ」


「あーうん、ありがと……」


……ほんと、調子狂うなあ。



私が学校帰りにバイトしているコンビニに、この半年、足しげく通い続けてる彼。


最近じゃこうしてねぎらいまでしてくれるようになったこの人は、桐谷蒼真《きりたにそうま》くん。


ちなみに、すさまじくイケメン。


でも、断じて彼氏などではない。


それどころか友達ですらない。


何を隠そう、彼は、私、水原比奈子《みずはらひなこ》のストーカーだ。

「今日こそ俺とデートしてよ」


「絶対イヤ」


「なんで?別に減るもんじゃねーじゃん」


このストーカー、実は小学校の同級生。


私は小3で転校して以来、一度も会っていなかったけれど。


蒼真《そうま》くんのことは忘れなかった。


忘れられるはずなんてない。


なぜって……。


『比奈子のブース!』


彼は、当時の私を毎日のようにからかって泣かせて、登校拒否寸前まで追い詰めた、人生史上一番憎いやつだからだ。


死ぬほど嫌い、とにかく二度と会いたくない、そう思っていた。