「まあぼくは、鳴宮征士がミレイの前から消えてくれれば、それでいいけどさ! なーんかジジィと愁兄の思惑どおりってのが気に食わない」

自分の片膝に頬杖をついた格好で、ふーちゃんはどこか不満気なままです。

「佐瀬サンも案外、長いモノに巻かれるタイプ?」

「ふーちゃんっっ」

大きく声を上げ、思わず躰を浮かせていました。

何でも心のままに口に出せるふーちゃんが、羨ましいと思えることもあります。
我慢しないで、自分を曲げずに臆さないプライドも尊敬できます。
けれど。
今の言葉はただの侮辱にしか聴こえませんでした。いくらふーちゃんでも、許せない気がした。

両方の拳をきゅっと握りしめて足を踏ん張り、上からきつく向かいを見据える。

「そんな言い方、ひどいです・・・っ。ふーちゃんに佐瀬さんのなにが分かるの? 佐瀬さんはっ」

「・・・いーから落ち着け。ガキには言わせときゃいい」

感情的になりかけた私の腕を掴んだのは佐瀬さんだった。
気怠げな吐息と一緒に見上げ、素っ気なく。

「でも・・・っっ」

「ほら、来い」

「!」

力強く躰が引っ張られバランスを崩す。ドレスの裾が広がる残像。
あっと思った時には、佐瀬さんの膝の上に横抱きに乗せられていました。  
間近にある佐瀬さんの顔。いたたまれずに俯いてしまう。

「・・・こっち向け」

微かに(かぶり)を振った。
怒りたいのか泣きたいのか、とても情けない顔をしていることだけは確かで。目を合わせる勇気は萎んだまま。

「美玲」

低く響いた声に、無意識に躰の芯が震えた。
外でそう呼ぶのは反則です、佐瀬さん・・・・・・。

観念しておずおずと視線を上向かせる。