「ずっとお祖父さまを探してたんですけど、どこにいるのか分からなくて。ごめんなさい、遅くなっちゃいました」

「いいよ、いいよ。私もなんだか、ゆっくりしてられなくてねぇ。やっと一段落したところだから」

隣りに座ってもまだ余裕がありそうなソファにそっと腰を下ろすと、お祖父さまは私の手を取って両手で包み、目尻を下げっぱなしでニコニコと。

「ほんとうに絵本から抜け出したみたいに可愛らしいお姫様だねぇ。ジィジの部屋に飾っておきたいくらいだ」

「ミレイはお人形じゃないよ。どうせ立兄が死ぬほど写真撮ってるから、等身大パネルでも作ってもらえば?」

テーブルの角を挟んで左側のソファに座ったふーちゃんが、腕と脚を組み、暗黒モードで口角を吊り上げます。

ふと気が付けばたぁ君の姿がなく、首を傾げて見せた。
ここに来るまでは一緒だったはずなのに。

「たぁ君、どうしたんですか?」

「スポンサー契約したゲーノージンの接待。の手伝い。言わなかった?」

聞いたような、聞かなかったような・・・?
私の前では、ちょっとどうしようもないお兄ちゃんですけど、『楠田課長』は胸を張って自慢できる有能なお兄ちゃんですから。
心の内で力こぶを入れ、エールを送りました。

「可愛い孫たちが将来を担ってくれるからねぇ、楠田は安泰だ。ほんとうに幸せ者だよ、私は」

お祖父さまは穏やかな笑顔で見回しながら、ふーちゃんに、向かい側の愁兄さまに。
そして。
その視線は、窓辺に佇んで外を見やる一人の背中に縫い止められた。

「佐瀬君も、会うのは久しぶりだねぇ。健勝そうで何よりだ」