一実ちゃんに『小学生の交換日記みたい』と呆れられた、征士君とのラインのやり取りも順調で。『今日は笑った顔が見られませんでした』とか『雨は大丈夫でしたか?』とか。

イラストスタンプ付きで返信は欠かさず来ますし、ときどき返事が電話になっても以前より自然におしゃべりが弾みます。
同じ職場になったことで、距離感が身近になってきたのかもしれません。

出かける彼を見送りながら、二人の時は見たことがなかった真剣な顔付きや話し方を目の当たりにして。少しやんちゃだった小さな騎士(ナイト)が、逞しい戦士に見える。
なんだかそれが誇らしい気持ちは、兄さまへの憧れや尊敬に似ている気もしました。








スマートフォンのお天気アプリの週間予報には、雲と傘マークが並び。
雨は苦手で、出かけるのも苦痛だった今までの自分が嘘みたいに。佐瀬さんとのささやかな時間が欲しくて億劫じゃなくなってしまう。
湿って荒れた鈍色の空とは裏腹に、私には凪いで満たされた日々が続いていました。

梅雨寒で蒸し暑さに悩まされることも少なかった6月をまたいで、七夕を迎えるそんな頃。

「・・・美玲、重大案件だ」

呼び出されたミーティングルームでテーブルの向かい合わせに腰掛け、腕組みをしたたぁ君が深刻な表情でおもむろに宣告しました。

「明日から双葉が来るからな」

『覚悟はいいか?』と訴えるように。悲愴感漂う溜息を深く深く、吐きながら。