初めて尽くしだった恋は。彼の海外勤務が決まり、一年ちょっとで幕を下ろした。
兄さまの前でだけ泣いて、慰めてもらって。傷になることもなく、今は大切な思い出のひとつになった。
思えば、あれから愁兄さまは、それまで以上に私を大事に愛しんでくれるようになった気もします。


「誰より近くで見守るのは、僕の役目だからね」

信号待ちで、兄さまが髪を優しく指で梳いてくれる。
私は目を閉じてされるがままに。

「僕と美玲のあいだに隠し事なんて・・・必要ないよ」


柔らかい響きが魔法のように私を包んで。甘く甘く、熔けていった・・・・・・。