ママには、一実ちゃんと女の子同士の相談があると神妙にお願いして、金曜の夜の外泊を許してもらいました。
これからはどんな小さな親孝行でもしようと、罪滅ぼしを密かに誓った私です。


一方の、快く偽装アリバイを了解してくれた一実ちゃんは、と言えば。
退社時間に合わせ、会社の前まで迎えに来てくれた佐瀬さんに、

「この貸しは3倍にして返してもらうわねー、佐瀬サン? あ、それとぉ、美玲を泣かせたらそのタマ、必ずもらいに行くからよぉく憶えといてねー?」

とても愛くるしい笑顔でそんなことを言っていました。
タマというのが、何の玉なのかはちょっとよく分かりませんでしたけど。

「おーコワイねぇ」

佐瀬さんも佐瀬さんで、飄々と受け流しながらも、一実ちゃんに対しては相変わらず気安いようです。


「佐瀬さん、一実ちゃんのこと好きですか?」

彼(彼女)を駅まで乗せ、別れたあと二人だけになった車の中で、ふと思ったままを口にしてみました。

「・・・・・・・・・」

一瞬こっちに流された視線は、かなり訝しげで。慌てて言葉を付け足しました。

「その、一実ちゃんと話している時の佐瀬さんは、自然に楽しそうに見えるので」