次に目が覚めたとき最初に目に入ったのは白。
白い天井、白い壁、白いシーツ…


…ここはどこだろう?

…翔は無事?あれからどのくらい経った?
死んじゃってたり…しないよね?

もしも…もしも、翔に二度と会えないなら…私は…


「まぁ!ひかりちゃん!」
「…おばあちゃん?」
「そうよ!あぁ…よかった…ひかりちゃんが救急車で運ばれたって聞いて…もう…心配したんだからね?」
「ごめんなさい…」
「ほら、お腹すいてない?よかった…あなたは無事で…」


ねぇ、おばあちゃん…どうしてそんなに取り繕った笑顔なの?

私"は"無事でよかったってどういうこと…?


「…おばあちゃん…翔は…?」
「え?」
「翔……私を庇ったから…私よりひどい怪我してたの…翔はどこ?」
「あ、あのね、ひかりちゃん…落ち着いて聞いてね?翔くんはね、意識不明なんですって。脳の損傷がひどくて…もう二度と目覚めないそうよ…」


脳の損傷がひどい…?

…もう二度と…目覚めない…?

翔が?


指先が、胸が、スッと冷えた気がした。
世界が…凍りついていく。

古びた写真のように色褪せて、水の向こうの景色みたいに歪んで、そして全ての音が遠のいた。


「翔は…死んじゃったの?」
「っ…植物状態なだけよ…まだ、あの子は生きてるわ」


しょくぶつじょうたい

その言葉の意味が一瞬分からなかった。

植物状態…身体に死が訪れるまで、翔の意識はずっと闇の中に閉じ込められたままだ。