雨が降っている。
カーテンを開くまでもなく、音と空気でそう感じる。

雨というのは気分が暗くなってしまうような、そんなじめじめさがある。
しかしそんな雨の日独特の雰囲気は嫌いではない。

軽く朝食をとり、着替えたエリーはカーテンを開き、深呼吸をして自分に気合いを入れる。
これから家の掃除をするつもりだ。家に置いてもらう代わりに家事をさせてもらうことにしたのだ。


居候の身になってから数日が経った。
最初の二日間はアンナも共に泊まってくれていた。
エリーのために気を遣ってくれたのだろう。その間にエリーは部屋や日用品の場所や、アンナとウィリアムのことを覚えた。それら全てを教えてくれたのはアンナだ。いてくれてよかった、とエリーは心から思う。

ウィリアムは部屋にこもっている。
家の主であるウィリアムは作家だ。
執筆中はいつもこうやって部屋にこもって食事もまともにとらない。朝食も一応用意をしたが、後で食べると言われたまま放置されている。最初は食事がまずかったのか、自分は嫌われているのか、と色々心配していたが、どうやらそうではないことがわかってきた。単純に集中して執筆をしているだけのようだ。
数日ですっかり家事が身に付いたエリーは、今日も今日とてウィリアムが集中して部屋にこもっているうちに家の掃除を済ませてしまおうと思っていた。