ドアをノックする音で、エリーはハッとした。
帰ってからどれほどの時間が経っていたのか、わからない。

「……いるか」

「は、はい」

声が掠れる。
この部屋で目を覚ましたことを思い出してしまう。

エリーは、扉をじっと見つめる。

「……すまない。アンナは帰った」

「え?」

「食事は出来ている。……一緒に、食べないか」

「……はい」

エリーは息を吐くようにして返事をした。

扉の前から人の気配が消える。
階段を下りる音がして、ウィリアムが去ったことを認識する。


暗い部屋の中、リヒトの輝きだけがエリーを照らしていた。
相変わらず、心配そうな顔をしている。

エリーはにっこりと微笑んで、部屋を出て行った。