「……食事は済んだか」

ふと上から降ってきた低い声に、エリーは顔を上げた。
ウィリアムだ。

伸ばしかけていた手は、リヒトに届いていない。
リヒトは少しむっとしたように腕を組み、そして何事もなかったかのようにエリーの頭に腰を下ろした。
ついていくつもりなのだろう。

エリーが立ち上がると、ウィリアムはそっと手を差し出した。

「……踊っていただけますか」

「……はい」

エリーが笑顔で手を預けると、ウィリアムはわずかに微笑んでその手に口づけをした。
エリーは少し驚いたように小さく声を出す。

リヒトはまたしてもむっと唇を尖らせた。



街の中央へ向かうと、既に優雅な音楽と共にたくさんの人が踊っていた。

お互い笑顔で手慣れたように踊るダニエルとアンナ。
少し緊張した様子のシェルに、そっと微笑んで相手の踊りやすいように動くサラ。

カイは小柄さを感じさせないくらい堂々と踊っていて、その相手のシャールはかすかに頬を染めて嬉しそうにしている。
リートは優雅に紅茶を飲みながらそれを眺めている。

森の動物たちは、まるで祭りの雰囲気を楽しむように街中を歩き回っていた。