翌週の月曜日、教室に入るや否や、手の平を合わせて頭にくっ付けたハルカくんが、すっ飛んで来た。


「ノゾミちゃ〜ん!土曜日はごめんねぇ、僕、勝手にどこか行っちゃったみたいで」

どうやら彼は、私達の前から消えた時のことはあまりよく覚えていないらしい。

まぁ、あれだけ夢中で走って行ったもんね……。


教室の入り口で一所懸命にペコペコと頭を下げるハルカくんの姿に、なんだか私の良心が痛み出してしまう。



「いやいや、そんなに謝らなくても良いよ」と声を掛け、「私もそれなりに楽しかったし」と言葉を続ければ、目の前の前髪にヒヨコのヘアピンを付けている人物が、不思議そうな顔で私を見上げる。


「……え、あれ? そうなの? いっちゃんからは”ノゾミちゃんがマサトくんと2人きりにさせられた”って聞いてたから、僕、てっきり嫌々遊んでたのかと思ってた。そうなんだ、へぇ〜、楽しかったんだ〜」

ふぅ〜ん、っと意味深なイヤらしい目付きで見てくる友人に、思わず通学鞄で顔を隠す。


「そ、そうそう。楽しかったよ、うん」


な、なんで私、こんなに顔が熱くなってるんだ。


動揺しつつも、そそくさと机に向かい、鞄を下ろして平然を装って教科書を取り出す。


後ろをついてきたハルカくんが、前の席の人の椅子に、勝手に腰を下ろした。

クルッと後ろに身体を回し、私の机に肘をついて「うふふっ」っと笑う。


「ノゾミちゃん、可愛い〜っ。顔、真っ赤だよ」