口づけひとつで愛情に満ちた部屋の真ん中で、堕ちていくような陶酔に浸った。


胸を焦がす灼熱の感情に溶かされて、私たちの心はひとつになる。




「俺いま、超幸せだわ」



名前などない、どこまでも緩く広がる感情を人は、”幸せ”と呼ぶのだろう。


……私とあなたとは、顔も違えば性格も違う。


好みも価値観も、それぞれ違う。


だからこそ、あなたが尊い。


あなたの命は、何よりも重い。


「ノゾミのことも絶対に幸せにしてやる。…………愛してるよ」



高ぶった感情に比例して、透明な二粒の水滴が瞬きと一緒にはじき出される。


……ねぇ、ご主人様。



この手綱は離さずに、しっかり握っていてね?




「あははっ。私も、あなたと出会えて……幸せだよ」



最後の息を吐き出す、その時まで……ずっと。










── 愛に包まれた世界の片隅で。



眩く柔らかい朝日が、



彼らを優しく見守る。



これからも、この先も。永遠に。 ──











番外編、【完】




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