「天音さん、」



卒業証書を片手に持つトオルくんが、校舎を背に立っていた。



「物思いに耽っていたの?」


「うん、そうだね。いろいろあったなぁって」


下駄箱から出てきた白虎町くんと玄武くんも集まってくる。


「天音ちゃん、みんなと話し合ったんやけど、これは君が預かっといてくれへんか?」


渡されたのは、海の向こうにいるあの人の卒業証書だった。



「これは、…………」



「マサトの帰り、待つんだろ?」



躊躇う私の背を押してくれたのは、トオルくんで。


最後まであなたは、私の欲する言葉を、送ってくれるんだね。



「手術を終えて日本に帰ってきたら、俺たちの分までこう言ってやってくれ。”おかえり”って」


かけがえのない青春が、私たちのあいだを駆け抜けていく。


「うん、分かった」


過ぎ去りゆく青春の風は、それぞれの未来へと私たちを繋いでいく。



「みんな、ありがとう! 私は、このクラスに転校してきて……最高に幸せだったよ!」



泣いて笑った1年間の想いを込めて、この場所にさよならを告げた。