「桜島病院って、……」


いつも受診するために持ち歩いている診察券と、同じ病院名……。


「そう、青龍院のお父さんが従事している病院よ? マサト、あなたも通院してるんだからよく知ってるわよね?」



息子の進むべき未来を示してくれた友人に、感謝の意を。


そんなメッセージと共に、寄付されたらしい。



他にも匿名希望者からの金額はどれも、えげつない額だ。


……余裕で、海外での手術を受けることのできるくらいに。


「これで分かったでしょ? マサト、自分で自分の命を諦めないで、海外でちゃんと手術を受けなさい……。あなたは、ひとりなんかじゃないわ。みんなに、こんなにも愛されてるんだから」



宇佐美ちゃんが差し出すスマホの画面はもうボヤけて波打っていて、よく見えない。


吐息交じりの涙とともに、誠司さんの台詞が頭をよぎる。


──『マサト、知ってるか? ”誰かを救いたい”という想いは、時に……』──



あんたが死んだ時から、そんな絵空事みたいな綺麗事は、現実にはありえねーって薄々思っていた。


(それでも、俺は…………信じたかった、あんたの言葉を。信じていた、心のどこかで)



……ああ、誠司さん、あれは本当だったんだな。



「奇跡、起こっちまったよ……」