宇佐美ちゃんはワザとらしく頬を膨らませ、腕を組む。


「あなたが吐血して倒れた次の日に、天音さんがこの募金活動を提案してくれたのよっ」



どうやら俺の病室を飛び出したあの日から、ノゾミはこの計画を考えていたらしい。


─『マサト、あのね……。明日、朝の10時に駅前に来てほしいの』─


そうか、だからアイツは昨日、あんなことを言っていたのか。

─『そこで見た光景を、しっかりと目に焼きつけて。あなたは、生きなきゃいけない人だってことを』─


だから俺にあんなにも、諦めるなって……一緒に生きようって、言ってくれたんだな。




「それからは、もう大変だったわ〜。あんたがまとめてたクラスの野獣どもを説得して……っていうのは嘘で、クラス全員が即答だったわ。『みんなで鳳凰 正人を助けるぞ!』ってね」


そして組んでいた腕を伸ばし、俺にスマホの画面を見せる。


「これ、見てみなさい? 募金用の口座作ったら、もうこれだけの金額が集まってる」

「はぁ?! なんだこの額?」


0が多すぎるんじゃないかと思うような金額が、表示されていた。



「これは、…………」


ある募金者の名前に、息が止まりそうになる。