駅周辺は特にこれと言って変わったところはなく、母親が首を傾げる。



「駅前に来てって言ってたけど、駅の中の方かしら?」



不意に、正人の視界の隅に心惹かれる服が横切る。


「あ、」



濃紺のブレザーとグレーのスラックス、……桜島高校の制服だ。



横切ったのは、やたらと彼に突っかかっていた笹原という名のクラスメイトで。


金髪頭が目立つ笹原は、小銭がたんまりと入った四角い透明の箱を持ちながら、嬉しそうに小走りでロータリーに入っていく。


正人は母の手を離れ、導かれるようにしてあとを追った。


(笹原の野郎、なんだって制服でこんなところに?)



鈍行ながらも、懸命に車輪を回す。


藁の葉がこすれあうようなざわめきが、人々の雑踏が、近づいてくる。


(それに、あいつが持ってた透明の箱は……)

自動扉を抜けると、そこには。