「君にどうしても、伝えたいことがあるんだ」



確信を持って言えるのは、これから告げられることは……彼の本心なのだろう。



「そして俺は、天音さんに謝りたい。天音さんは……マサトのことが好きだった。だが、俺は強引に君に迫って……マサトと付き合えないように、妨害した」


覚悟を決めた、真剣な顔をしているから。



「そのことで天音さんが苦しんでいたことも知っていた。天音さんは自覚、ないだろうけど」


……確かに、トオルくんと付き合っていて苦しんでいた覚えはない。


初めて、手を繋いで愛してくれた。


ほのかな温かさや、幸せをくれた。


むしろあんなに大切にしてくれて、感謝しているくらいなのに。


別れることにより傷付けてしまって、なんど謝っても謝り足りないくらいなのに。


だが、それでも「知っていたよ」ともう一度、復唱される。


「俺の視線の先は天音さんしかいないんだ、本人も気付かないことにだって、すぐに気付くよ。……マサトが、自分の病気と叶わぬ恋に苦しんでいたことも。俺と天音さんが付き合ったことで希望も見えなくなって、自暴自棄になっていろんな無茶をしていたことも。あいつが天音さんに冷たく接するような捻くれた性格になってしまったのは、希望を奪った俺のせいなんだ」


おぼろげな暗い景色の中、低い声が懺悔を口にする。

「そもそも誰かを自分のモノにしたいだなんて、傲慢な考えだよな。俺は、自分の傲慢さに気付けなかった。だから、栗木さんに嵌められたのも、天音さんに別れを告げられたのも、自業自得だと思ってる」


カレイドスコープの中央に位置する鐘から、18時を知らせる時の音が鳴り響く。


いつの間にか、噴水は止まっていた。


周囲の音が消えて、やけに静かで。