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マサトが倒れてから、数日後。


ホームルームの場で、宇佐美先生からクラス全員に私の”マサト救出大作戦”が伝えられた。


「はっ、鳳凰の野郎、病気だったのかよ」


普段から彼に難癖をつけて絡んでいた笹原がショックを受けていたのには、意外だった。


なんやかんや言いながらも、喧嘩相手がいなくなるのは寂しいようで。


室内には、辺りの音をすべて持ち去られたように静けさが流れる。



「や、やりましょう! ぼぼ、僕たちで、鳳凰くんを助けましょう!」


オタクくんがコフーッと大きく酸素を吸い上げ、握りこぶしを作った。


「おう! やってやろうぜ?! ここで動かねーのは男じゃないっしょ!」
「この際、鳳凰に恩着せてやろうぜ〜」
「ぎゃはは! それいいなぁ!」


相変わらず動機は不純だが、バラバラに散らばっていた声が、同じ方向に向かって動き出した。


文化祭の時のように、……”鳳凰 正人”という人物を軸にして30人あまりの心がひとつになっていく。


あの人に助けられてきた者たちが一致団結し、今度はあの人を助けようとする……。



しかし、私が考えた”方法”はこんなものじゃ終わらない。


もっと、たくさんの人の力を……借りなければ。



壇上に立っている宇佐美先生が、私に「うまくいったわね」っとウィンクをしてくれた。



「じゃぁ、具体的な内容を詰めていきましょうか。ちなみに、活動場所については桜島駅に問い合わせてるの。みんながいけそうな日にちを決めて、それから…………」